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りんどう


 美しい花に龍胆という漢字は不粋というしかない。葉が龍葵(イヌホウズキ)に似て、味は胆のように苦いので漢名をそのまま音読みしたのだ。日本は古代中国の影響を受けていたので、植物の名も漢名が多い。
 昔は、リュウタン、リュウダンなどと呼んでいたが、いつしかリンドウに転訛したらしい。
『源氏物語』の「夕霧」の項に「草むらの虫のみぞ、より所なげに鳴き弱りて、枯れたる草の下より、龍胆のわれひとりのみ、心長う這い出でて、露けく見ゆるなど……いと堪へがたきほどの物悲しさなり」
 晩秋に霜に打たれ、葉は枯れつくしたが、なお深い紫色の花を開くりんどうの美しくも哀愁をたたえた姿に心をひかれる。

 冬早き霜葉の中に咲きいでて
 むらさき寒し龍胆の花              太田水穂

 りんどうはアフリカを除く温帯と熱帯山地に約五百種が自生しているといわれ、日本には十数種が原生、切り花用に栽培されているのは、オオヤマリンドウとエゾリンドウ、鉢物で売られているのはキリシマリンドウ。
 一般に秋咲きが知られているが、春に咲くコケリンドウ、ハルリンドウ、フデリンドウなどもある。
 りんどうは開発の波を受けて山野から姿を消しつつある。鎌倉でも以前はよく目にした山路だが、めったに見られなくなったのは淋しい限りである。

 山路きて、君が指すままに
 わが摘みし、むらさきの花
 君が問ふままに、その名を
 わがおしへたる、りんどうの花   佐藤春夫

 東慶寺、海蔵寺、安国論寺の秋の庭に哀愁を漂わせている。
 りんどうの花ことばは「寂しい愛情」。花が開くのは日の当たるときだけで夜は眠ってしまう。日中でも曇天や雨霧のときは閉じて早寝するので、そんな花ことばが生まれた。

 りんどうの夜霧に眠るさまも見し       村上杏史 
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